正しく言うなら、押見修造の方が「オレ的」だ。
この記事はnoteからの転載です
純情ピュアボーイ
とりあえずサムネイルを、と思ってnoteのサムネイルワード検索欄に「男子高校生」と入れたらこの写真が出てきた。一発でこの写真を選んだ。写真の右の子がとても僕に似ていたから。中高時代の僕そっくりだった。(そして左は、高校の時の友達”矢野くん”に似ている)
この写真の男子学生たちは多分、「イケてない奴」だ。
校則に引っかからないよう襟足と耳周りをスッキリとさせた髪型。高校指定のバッグは缶バッチなんて付けられたことがなく、入学時から「使用感」の一点しか変化しない。傘も黒。きっと、入学時に学生服と一緒に買い与えてもらったやつなんだと思う。
誰が撮ったかもわからない写真の誰かもわからない男子生徒のイケてないイジリがしたいのではなく、大事なのは、この男子生徒は僕自身のイメージだと言うことだ。
なかなか自分自身のイメージは変わらない。
愛媛のイケてない中高生だった僕は、「付き合うってなんだ?」とか本気で考えてた。恋愛の「れ」の字もわからない純情ピュアボーイだった。愛媛県という一都道府県の小さな街が全てだと思っていた。
だけどなぜか僕は、二つ上の演劇部の先輩が残した東京の大学の赤本に糸引かれ、東京ドリームボーイとして上京を果たし、しっかりと東京の荒波に揉まれた。いつしか、あらかた東京の案内ができる位の東京ボーイと変化していった。
いろんな出会い、出来事をへて人は成長していく。僕も例外でなく、純情ピュアボーイだった僕と比べたら、恋愛の「れ」の字くらいはわかるし、「付き合うってなんだ?」なんて答えのないことを考えないことだってできる。「セフレ」だの「ワンナイト」だのなんて言葉にビビらず平気な顔して会話することだってできる。もうちゃんとした東京ボーイだ。
それでも僕の僕自身のイメージの中にはいつまでも純情ピュアボーイの僕がいて、東京ボーイになってしまった僕と共存している。へんな気持ちだ。
前置きが長くなってしまったけれど、そんな僕は押修造作品の方が好きだ。浅野いにおの作品よりも。
僕と浅野いにお
浅野いにおの作品は好きだ。
「おやすみプンプン」は全巻持っているし、その他短編たちも読んだし、「デデデ」も読んでる。
おやすみプンプンを読んでると、ずっとプンプンに胸が苦しくなるし、「愛子ちゃん」を見てても胸が苦しくなるし助けたくなる。
浅野いにおの作品は面白い。人物もセリフも人間味があってとてもリアルだ。リアルだけど、リアルだからちゃんと人間の嫌な「リアル」もちゃんと描かれてて、世間の不条理さに悲しくなるけど、美しさも描かれて少し救われる。
物語だから感情移入してしまうし、より感情移入のできるような、より自分に近いキャラクターを探してしまう。
プンプンなんかは自分に近いんじゃないかと思ったりもするけど、なんかちょっと違うのだ。プンプンは僕なんかよりもちゃんと、なんというか、都会的だ。おしゃれで、センスがある。
浅野いにおの作品に出てくる人物は全体的に、「都会的・おしゃれ・センスがある」イメージがする。(本当に偏見で主観的だけれど)
だから、好きなんだけどでもなんだかちょっと好きになりきれない。
嫉妬みたいな、悔しさみたいな気持ちがある。
(ちなみに「真空ジェシカ」にもそんな気持ちになって斜に構えてたけど、とてもネタ面白くて好きでした。)
僕と押見修造
その点、押見修造の描く男子はとても僕が抱いている僕自身のイメージ、純情ピュアボーイに近い。
多分、浅野いにおに出てくる男子よりも、無垢で、弱くて、田舎的だ。
そうだ確かに、悪の華も、血の轍も舞台はどこかの田舎だ。
髪型も、イケてない男子の常套句「目と襟に耳にかからないように切ってください。」の注文で地元の1000円カットで切ってもらったような、サムネイルの男子生徒のようなものが多い。
良い。
『「ヤングマガジン」40周年を記念して押見修造先生の新作読み切り「りり」がwebで公開中』としてTwitterで流れてきて読んだ読み切りもすごくよかった。
主人公と過去・現在が一切同じだというわけでもないし、女性にあのようにしてほしいとかそういうわけではないのだけど、とにかく刺さった。
どこがどのように刺さったかを文書化して一般に公開できるほど、まだ自身の内面をオープンにできない。つまるところ、単に恥ずかしい。
とにかく、僕にとって押見修造の作品は、東京ボーイと化して消えてしまった純情ピュアボーイの残滓に寄り添ってくれるような、友人のようなそんな存在なんだと思う。
僕は今は東京ボーイだけど、時間と共に東京おじさんとか、イケおじとか冴えないおじとかなんか色々変わるんだと思う。
でも、どんな僕になっても、中高生の頃の純情ピュアボーイは僕の中に居て、共存していく。
だからいつまでもぼくは、浅野いにおじゃなくて押見修造が好き、な気がする。